伊藤織恵
1975年生まれ。東京都祐天寺育ち。昭和大学卒業後、東京医科歯科大学 小児歯科学分野を専攻。卒業後、東京医科歯科大学付属歯科病院小児歯科学教室医員として勤務。大学病院での勤務実績を生かして、2010年に生まれ育った祐天寺にて開院。小児歯科のプロとしてだけでなく3児の母としても活躍している。
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INTERVIEW

大学病院での歯科勤務経験と子供好きな性格を活かして開業いたしました。私自身も3人の子を持つ母で、共働き世帯の多忙さはよく知っていますので、お子様の歯科口腔育成が効率よく進められるようサポートさせて頂いております。近年は、助産師や絵本作家などの他業種と連携してさまざまなイベントを開催。ゴミ削減への取り組みとして、ペーパータオルの代わりに、患者様へハンカチを貸し出す「ハンカチ活動」も行っています。子供たちに少しでも環境問題への意識を持ってほしいという教育的な意図もあります。

伊藤織恵

子供が変わるにはまずお母さんから

小児に携わるドクターとしては、患児の主訴だけでなく、健やかな発育にも重点を置いています。その点で見逃せないのが、日本の予防歯科の受診率の低さです。私が思うに、定期的な歯医者通いが難しいのは、子供の歯医者嫌いが一因なのではないでしょうか。誰だって自分の子供が泣いて嫌がる場所に積極的に連れて行こうとは思いませんよね。
幣院でも、子供たちが歯医者に持つネガティブなイメージを変えようと日々努めています。その中でも最も有効な方法は、お母さんにリラックスしてもらうことです。なぜなら、歯医者に来られるお母さんはだいたい強張った顔をしていて「痛くないから!大丈夫!」と子供を必死になだめていることが多いからです。そうすると、子供は逆に不安になってしまうんですね。けれど、お母さんが笑顔で「いってらっしゃい」と見送ってあげれば、子供は興味津々で診察室に入ってきます。
世のお母さんは、限られた時間の中で子供と向き合い、懸命に頑張っています。そんな中で私たちができることは「お母さんが頑張れないところは私たちが見ますから大丈夫ですよ」というメッセージを発信することです。「私ひとりで子供を見る必要はないんだ」と思えれば、少し肩の力を抜けるはずですから。

普通の主婦が「先生」と呼ばれるようになるまで

伊藤織恵 幣院で、もともとは受付スタッフとして働いていた女性がいます。ただ、彼女の対応力を見ていると、もっと別の伸びしろがあるのではないかと感じました。それで「姿勢の勉強会に行ってみない?」と声を掛けたんです。
姿勢は歯並びと深い関係があるのですが、子供に姿勢指導をするためには一定の知識が必要です。それで彼女にお願いしたところ、すぐに了解してくれて「姿勢指導士」の資格を取得してくれました。
そこから私たちと一緒に患者様を診るようになり、彼女は患者様から「先生」と呼ばれるようになりました。最初はこの扱いに照れていましたが、徐々に、自分が患者様を持っていることへの自覚が芽生えたようです。仕事への取り組み方がより熱心になり、時が経つごとに患者様にも良い変化が表れてきました。私の目から見ても、彼女の良さが最大限に発揮されていると感じました。
このようなケースを見ていると、すべての女性にはキラキラ輝ける可能性が眠っているのだと思います。ですから「女性」でも、「主婦」でも、もし何かやりたいことがあるなら、トライされてみるべきです。私もそういう女性たちを応援したいと思っています。

女性も声を上げるべき時代

伊藤織恵 現状、歯科医師は男性の方が多いのですが、今後は女性の歯科医師がより増えてくれると嬉しいです。患者様が女性の場合は、特に同性の医師を希望されるケースが多いですし、女性ならではの繊細さや、人への寄り添い方は、必ずこの業界で活かせると思います。また、子供たちが歯医者や歯科衛生士の仕事に興味を持ってくれたときは、詳しくお話するようにしています。
これからは女性がより活躍できる時代になると思いますが、そのためには女性側もはっきりと意見を言う必要があるでしょう。この点は私も同じで、子供の歯科指導のためには、お母さんの耳に痛いことを言わなくてはいけないときもあります。指導した後は、来院して頂けなくなったり、厳しいレビューを頂いたりすることもあります。自分の意見を伝えることは、それだけエネルギーを必要としますが「本当に困っている患者さんを助けたい」という信念に従うなら、避けては通れない道です。皆さんも何かしたいと思うことがあったら、その想いに従って、はっきり意見を口に出すようにしてみてください。