大塩達弥
1989年日本大学医学部大学院産婦人科修了。医学博士。日本大学医学部附属板橋病院勤務後、関連病院に出向。関東逓信病院(現NTT東病院)勤務を経て、97年おおしおウィメンズクリニックを開設。2004年医療法人社団愛賛会設立、理事長に就任する。
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INTERVIEW

女性の社会進出は19世紀のフランスから始まり、オーストラリア・ロシア・カナダ・ドイツ・イギリス・アメリカへと広がっていきました。そして日本では、20世紀初頭の大正時代にはじめて婦人参政権が認められ、現在に至っています。「女性らしさ・男性らしさ」という言葉がありますが、性の多様化が進む昨今、個人それぞれの生き方には『性』という言葉は似合いません。個々のアイデンティティが重要視され、ユニセックスが持てはやされる一方で、内面の女性らしさをさらに追求されるという風潮もみられます。そのような社会状況の中、心やからだに関する悩みを抱えてしまう女性は決して少なくありません。女性に起こるさまざまなライフイベントをトータル的にサポートしたい。その思いから、産婦人科のみならず、コスメやエステといった美容なども取り入れた「女性が楽しくなる病院」をコンセプトに掲げ、日々取り組んでいます。

大塩達弥

女性の社会進出にともなう心身不調の増加

女性は思春期になり初潮を迎えると、生殖機能が発達し、妊娠・出産という人類の繁殖に重大な役割を担うようになります。また、社会的には、女性特有の優しさや繊細さ、豊かな感受性に由来する女性的思考を生かし、経済・政治・医療・教育・芸術など、さまざまな分野への進出を果たすようになりました。しかし、女性が社会に進出すればするほど、精神・身体の不調をきたしやすい傾向があります。それは大脳の構造に関係しており、女性は左右の大脳皮質をつなぐ脳梁が男性よりも太いため、男性と比べるとあらゆる物事に感情移入をしやすく、五感も豊かなのですが、一方でストレスを溜めやすく、ホルモンバランスが乱れやすい。それが自律神経に影響するために、心身の不調を起こしやすいのです。さらに、昔はあまりなかった婦人科系の疾病も増えてきています。子宮内膜症がその代表的な病気です。原因は環境因子ともいわれていますが、中でも一番の症状は月経困難症です。これがひどくなると、子宮・卵巣・消化器の器質的癒着をきたし、不妊症のおもな原因のひとつとなります。子宮内膜症に罹患すると、日常生活の日々の質の向上が失われ、憂鬱な気分になり、内にこもりやすくなる。ひどい方は自信をなくし、うつ病にまで発展することもあります。我々が日々、婦人科外来で診察する患者の約半分は、この疾病で治療を受けています。

女性をいきいきと輝かせる「フェロモン」

大塩達弥 女性の心身の不調に大きく関わっているのが、女性ホルモンの減少です。卵巣から分泌されるホルモンで、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があるのですが、それが30代後半からだんだんと減ってきて、卵巣機能が低下し、感性や神経も鈍くなります。さらに、50代にかけて更年期に入ると、女性ホルモンの分泌が最低限になり、心臓疾患や精神疾患、骨粗鬆症などの病気が発生しやすくなります。結論として言ってしまえば、この女性ホルモンを増やすことはできません。しかし、女性ホルモンをコントロールすること、類似物質を補充することで、卵巣機能が衰えても、精神的・肉体的な衰えは回復することができるのです。女性が女性らしく一生を過ごしていくために、女性ホルモンを分泌する工程の中で作られる物質の一部である「フェロモン」がその重要な役割を果たすと考えています。よく、魅力的な女性に対して「あの人はフェロモンが出ている」と表現されることがありますが、単純に誰かを好きになるとかならないとかではなく、もっと広い意味で、女性の美と健康に関わる物質です。このフェロモンを分泌を促すためには、基本的なことですが、規則正しく生活をすること、ストレスをためないこと。そして何より「ひとつのことをずっと続けている人」は、フェロモンの分泌が多く、いきいきと輝き続けられます。スポーツでも料理でもなんでも、自分が「良い」と思うものを持続していく。そのことで女性ホルモンの減少による心身不調の発生を抑え、カバーすることができるのです。

すべての女性は『MOTHER』

大塩達弥 時代の流れとともに女性の自立が徐々に認められてきて、意欲的に社会進出する方が増えてきたことは、私は良いことだと思っています。しかしその一方、よりさまざまなストレスを抱える方が増えてきている現状もあります。男女雇用均等法が施行され、男性と同様の仕事を行わなければならないという一面もありながら、精神的・内面的な女性らしさを求められることがあるでしょう。それを「悔しい」と感じる女性も多いと思います。そこを乗り越えて仕事をしている女性たちは、とても強い。女性活躍の理想は、結婚・出産などのライフイベントを経験しても、それがブランクとならない形でキャリアアップができることですが、まだまだプライベートを犠牲にしている人も多いと感じています。女性が女性らしく、自分らしく生きていくためには、覚悟を決めて、それを受け止めてくれる環境を「自分で」作っていくことが必要だと思っています。私にとって女性はすごく大きな存在で、まさに『MOTHER』そのものです。女性の人生のすべてを、とにかく一生懸命にサポートしていきたいと考えています。